是非もなし

地下のオタクだったし舞台も見るし映画を好むし呼吸をしている。

平成生まれと白黒映画

映画が好きだと自称している日本人として「見ておかなければ」という使命感を抱く作品がある。黒澤明監督作品だ。

 

お恥ずかしながらわたしは22年間生きてきて黒澤監督作品を昨日まで見たことがなかったのだが、中学の英語の教科書に「世界のクロサワ」という黒澤監督をテーマとした章があったり、同期が今めちゃめちゃハマりこんでいるスターウォーズシリーズは「隠し砦の三悪人」から影響を受けていたりと、黒澤監督の功績は知ってはいたが、実際に見てみよう!とは中々ならなかった。

 

それはなぜか。古すぎる映画というものに苦手意識を抱いていたからである。

高校生の現代史の授業で「第五福竜丸」の分野で「初代ゴジラ」を見たのだが、授業中は実際の事件の悲惨さと、初代ゴジラの圧倒的なインパクトで大変な衝撃を受けたのだが、後にレンタルして家で見たときはテンポが遅く感じてしまい序盤から寝てしまったことに起因する。

当時のわたしの「初代ゴジラ」の期待値の高さ故に大きく落胆してしまったことから、古すぎる白黒映画が苦手になってしまったのだ。

まぁ今言えば当時はなにかと焦っていたがゆえにせっかちに拍車がかかっていたし、視聴者を飽きさせないためにジェットコースターのようにストーリーが展開するアニメやら映画に慣れすぎていたと思う。

 

そんなわたしだったが、今回「4Kリマスター 七人の侍」を見た。映画館で。

もともとその日は映画を見る予定もつもりもなかったが、銭湯にいこう!と思い立ち、現在進行形で眼鏡が壊れているわたしは銭湯にいくためだけにコンタクトを消費するのがいたく惜しく感じ、ついでに映画を見ることにし、なんとなく選んだのが「七人の侍」であった。

本当は「万引き家族」が見たい気持ちはあったのだが、確実に鑑賞後メンタルに大ダメージを負うであろうことが想像つくので未だ見れていない。一体いつになったら見れるのか。

 

そんなわけで本当に思いついたまま「七人の侍」を見たのだが、まぁ正直寝た。

映像は大変きれいに処理されていて、コマ落ちや汚れもなかったのだが、いかんせんセリフが聞き取りにくい。

現代の高性能な音響システムに甘やかされていたわたしの情弱な耳はそうそうに聞き取ることをあきらめ、映画館特有の眠気をさそうあの空気に導かれるままに寝てしまった。

勘兵衛が子供を盗賊から救い出したところから勝四郎が志乃と対面するところくらいまで寝ていた。結果的にいうとこれをいたく後悔することとなる。

 

当然なのだがめちゃめちゃ面白いのだ。そりゃそうだ。こんな無学な小娘が今更ながら語る必要がないくらいの名作である。

色がないことがなんの不利にならないほどに秀逸な映像と演出に、見れば見るほど愛着を抱く登場人物たち。物語に不要な印象を抱かせない恋愛要素。

序盤で断念したセリフの聞き取りにくさだが、慣れてしまえばなんてことないし、というか映像を見ているだけで大体の展開が把握できる。

それほどまでに映像が、展開が、構成が素晴らしいのだ。CGなんて一切ないのに映像に古臭さをまったく感じないのである。

何よりも衝撃的だったのは合戦シーンである。上記にもあるがCGがないのだ。だからこそというか、映像の衝撃が、説得力がすさまじい。

当然なのだが嘘がない。盛大に跳ねる泥しぶき。画面を覆う雨粒。馬に引きずられる野侍。そのひとつひとつの圧倒的なまでのリアリティ、というかもうここにはリアリティしかないのだが、CGがないことによる圧倒的なリアリティがCGというCGを駆使された大作ハリウッド映画になれたわたしにはとてつもない衝撃であったし、ここまで息をのんでみていた映画はおそらくないと思う。

 

おあいにく私にはうまく説明できる学も語彙もないのだが、50年以上も前の作品に古臭さを感じないどころか、数百億ドルもの製作費を投じて作られるハリウッド大作にも劣らないほどの衝撃を受けることがどれだけのことだろうか。

ありとあらゆる意味で忘れられない出会いとなったし、なんとなくでこの映画を選んだ自身にサムズアップしたい。ちなみに鑑賞に体力が尽きて銭湯にはいかなかった。

 

繰り返しになるが悲しいことにわたしにはこの「七人の侍」のすばらしさを筆舌しつくす能力がない。それをいたく惜しく思う。

今まで20年ちょっとばかし生きて築いてきた私の中の何かが大きく覆されるほどの衝撃であったし、これから黒澤監督のほかの作品を見るのがとても楽しみだ。

 

ちなみに一番好きなシーンは勝四郎と志乃が出会い、一面が白い(であろう)野花に志乃が埋もれるシーンである。月並みではあるが「初恋」と表題をつけたくなるほどに美しい情景であった。本当にワンカットワンカットが美しい映画だった。

 

 

寝れないしオタクっぽい記事かこ!と思ったら三流ライターの映画評論みたいになったし今日はこれからリマスター版の「椿三十郎」を見に行きます。めちゃめちゃ楽しみ。

ちなみに七人の侍は当時の通常の映画の七倍の制作費を投じて作られたらしい(wiki情報)んですが、今だったらCG製作に当てられるであろう資金が現実でガチで再現するために使われるんだからそりゃぁすごくて当然な気もするけど、いまそれだけの資金があって現実でやろうとしてもここまでのリアリティにはならない気がする。ある意味白黒映画だからこその説得力なんじゃないかなって。

ちなみに一番好きなキャラクターは菊千代です。三船敏郎ずるい。